これから行政書士の勉強を考えている人、あるいは勉強を始めて間もない人に向けて行政書士という試験を全くゼロの知識から合格するために取るべき基本戦略を解説します。
まず最初に言っておかなければならない事は、この試験はおそらくみなさんが予想しているよりもはるかに多くの情報を頭につめ込まなければならない試験だということです。
そして最初にそのことが分かって、”とにかく早くスタートしなければいけない”ということで、やみくもに勉強を始めてどんどん進むと‥分かっている所と、分からない所がごちゃごちゃになってきて現在の自分の立ち位置を見失い迷子になってしまう事はよくある話なんです。
そういった事にならないように、勉強する自分とは別に、勉強の計画を立てたり、項目ごとに理解度を細かくチェックしたりするナビゲーターとしての役割もこなさなければなりません。
そして、そのナビゲーターが有能であればあるほどゴールの可能性はぐんと高まります。
つまり、あなたが有能なナビゲーターになることが今回の最大の目的になります。
もくじ
まずは敵を知ることから!
〈 試験の概要 〉
【 令和3年度 行政書士試験 】
2021年7月26日(月)
↕︎ 申し込み期間
2021年8月24日(火)(ネット)
2021年8月27日(金)(郵送)
- 2021年11月14日(日) 試験日
- 受験資格 特にありません、どなたでも挑戦できます。
- 試験範囲 行政書士の業務に関し必要な法令等(憲法、行政法、民法、商法及び基礎法学)、行政書士の業務に関連する一般知識等。(政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解)
- 出題の形式 行政書士の業務に関し必要な法令等は択一式及び記述式、行政書士の業務に関連する一般知識等は択一式。
- 試験機会 年1回 11月の第2日曜日(試験の申し込みは一般財団法人行政書士試験研究センターで)
- 時間 3時間
- 合格基準 60%以上(180/300)(足切りあり(行政書士の業務に関し必要な法令等は 50%/122点以上・行政書士の業務に関連する一般知識等は40% /24点以上))
- 合格率 概ね10%前後
※ 一般的な資格試験は大きく分けると2種類あります。
一つは基本情報技術者に代表される絶対試験と言われるもので合格する点数があらかじめ決められていてそれをクリアすれば合格するというもの。
もう一つは宅建士に代表される相対試験と言われるもので概ね合格する人数が決められていてその人数の中に入れば合格するというものである。
そして行政書士の試験は絶対試験の部類に入ります。
〈行政書士と宅建士の合格率の変遷の比較〉
行政書士 | 宅建士 | |
平成22年 | 6.6% | 15.2% |
平成23年 | 8.1% | 16.1% |
平成24年 | 9.2% | 16.7% |
平成25年 | 10.1% | 15.3% |
平成26年 | 8.3% | 17.5% |
平成27年 | 13.1% | 15.4% |
平成28年 | 10.0% | 15.4% |
平成29年 | 15.7% | 15.6% |
平成30年 | 12.7% | 15.6% |
令和元年 | 11.5% | 17.0% |
上の表で分かると思いますが宅建士がほぼ安定的な合格率なのに対して行政書士はかなり数字にばらつきがあります‥
試験を作成する側もある程度は狙ってはいると思いますが、どうしても難しい年と易しい年が出てしまいます。
これが絶対試験の特徴になります。
「 国家試験なのに不公平だ」と感じるのも無理はないと思いますが試験の特徴なので仕方がありません。
結論を言えば:この試験を攻略するには平均的な合格レベルよりも高いところ(合格者の中でも上半分) を目指す必要があるということです。
〔 目標とする得点 〕

〈 試験の配点 〉‥科目縦項目が試験科目になります、配点縦項目が実際の配点です。
科目 | 択一式 (1問4点) | 選択式 (1問8点) | 記述式 (1問20点) | 配点 | 目標 点数 (例) | 結果 得点 (例) |
基礎法学 | 2 | 8 | 4 | 4 | ||
憲法 | 5 | 1 | 28 | 20 | 16 | |
民法 | 9 | 2 | 76 | 48 | 40 | |
行政法 | 19 | 2 | 1 | 112 | 90 | 86 |
商法 | 5 | 20 | 12 | 8 | ||
一般知識 | 14 | 56 | 32 | 28 | ||
合計 | 216 | 24 | 60 | 300 | 206 | 182 |
まず目標とする点数配分を大まかに説明します‥ざっくり言いますと300点中200点を超えたあたりが目標になります。(そんなもんでいいんですか?とちょっと思いますね‥先程も言いましたが6割がボーダーラインの絶対試験です。)
やはり最も配点の多い行政法を中心に組み立てることになります‥行政法は80%正解を目指して悪くても75%を死守‥まずはこれが前提になります合格基準の60%を取れない科目の補填(ほてん)をするイメージです‥(行政法は1点を積み上げる時間の最も少ない科目です、点数はこの科目で稼ぐこと=これが基本になってきます、行政法が50%位の出来だと合格はありません)
憲法・民法も最悪でも単独で60%確保、できれば+αを目指したいところです ‥(この2科目でどれだけ粘れるかがこの試験の合否を左右します、難易度の高い科目です)
基礎法学・商法・一般知識に関しては最悪でも合計で50%確保、できれば+αを積み上げる ‥(根拠はこれらの科目は非常に範囲が広くその割には問題数が少ないため過去問のヒット率が低く深入りすると時間を浪費して迷子になってしまうので最悪でも50%でしのぐ作戦です、ただし一般知識に関しては単独で40%足切りがあるので注意が必要)
というふうに全体の合格基準が6割だからといってそれぞれ6割超えを狙うのではなく科目ごとにそれぞれの役割というか取るべき点数が違うのでまずはそれを理解してください‥(取れるところで稼ぎ、難しいところは5割死守の考え方)
この章で一番言いたかったのは科目によって実際の配点にばらつきがあるということ‥
科目ごとに、勉強の比重を変えてくださいということです。
〔 具体的な戦略 〕

時系列でいくと次のような流れで進めていきます。
- 基礎力養成期
- 実力養成期
- 応用力養成期
- 完成期
〈 基礎力養成期 〉
まずはTEXTと問題集を用意しましょう。
- TEXTを読み進め
- 項目ごとに問題を解いていく
- 間違えたところに印をつけ復習
- ①〜③を最後まで繰り返す
- 印の問題を解く
基本的にはこの流れを大きく2回こなして全体像を掴むのが狙いです。
難しければ飛ばしても構わないし、なんなら面白そうなところから始めてもいい。
オススメは下記のようにするべきことを1枚の紙に書いてクリアファイルに入れてやったところをチェックすると分かりやすいです。
基礎力 養成期 | TEXT 読み込み | 過去 問題集 | 間違い チェック | TEXT 読み込み | 過去 問題集 | 間違い チェック |
基礎法学 | ○ | ○ | | |||
憲法 | △ | | ||||
民法 | ○ | | ||||
行政法 | ○ | |||||
商法 | △ | | | |||
一般知識 | ○ | ○ | |
〈 実力養成期 〉
過去問の枝別問題集、記述式・多肢選択式対策の問題集を追加する。
過去問の知識をより確実に仕上げるための枝別問題集と記述式・多肢選択式の強化用の問題集をメインに実力を強化していく。(2回ずつやる‥合わせてTEXTの読み込み1回と過去問も再度1回こなして応用力養成期に進む(ただし正答が出せなくても理解できていない所はしっかり復習して確実に理解できてから次に進む)
実力 養成期 | 枝別 問題集 | 間違い チェック | 記述多肢 問題集 | 間違い チェック | 〜 (繰り返し | TEXT 読み込み | 過去問 |
基礎法学 | ○ | — | — | | |||
憲法 | △ | △ | ○ | | ○ | ||
民法 | △ | ○ | × | △ | | ○ | |
行政法 | △ | ○ | × | △ | | ||
商法 | △ | — | — | | |||
一般知識 | ○ | — | — | |
この辺りまでくればかなり実力がついてくる頃だが、逆に自分の欠点やこの試験の難しさが身に染みてくる時期でもある‥もうすでに折り返し地点は過ぎているのでもうひと頑張りである。
〈 応用力養成期 〉
これまでの勉強が100%であるならばちょうど合格レベルに到達する、ただし確実に合格するには+αのアプローチで+30点積み上げる必要がある。
ここではさらに4冊追加する。
この4冊を2回繰り返すことと、枝別問題集、多肢・記述式問題集、過去問題集をそれぞれ1回やることが今期のミッションである。
応用力 養成期 | 改正法 ×2 | 判例集 ×2 | 行政法 ×2 | 時事 ×2 | 枝別 問題集 | 記述 多肢 問題集 | 過去問 |
基礎法学 | — | — | — | — | ○ | — | ○ |
憲法 | — | △ | — | — | ○ | ○ | ○ |
民法 | △ | △ | — | — | △ | ○ | ○ |
行政法 | △ | △ | △ | — | ○ | — | ○ |
商法 | △ | △ | — | — | ○ | — | ○ |
一般知識 | — | — | — | △ | △ | — | ○ |
〈 完成期 〉
いよいよ完成期である。
最後は予想問題集をこなし今まで見落としていた自分の弱点の強化、今までやってきた振り返りである。
予想問題に関しては結果に一喜一憂してはいけない、あくまでも+αの情報が得られれば儲けもんである。
試験前に今までやってきたチェックポイントを確認できれば合格圏内に突入です。
〈最終チェックリスト〉
完成期 | 改正法 | 判例集 | 行政法 | 時事 | 枝別 問題集 | 記述 多肢 問題集 | 過去問 |
基礎法学 | — | — | — | — | ○ | — | ○ |
憲法 | — | — | — | ○ | ○ | ○ | |
民法 | ○ | — | — | △ | ○ | ○ | |
行政法 | △ | — | ○ | — | ○ | ||
商法 | ○ | — | — | ○ | — | ○ | |
一般 知識 | — | — | — | △ | △ | — | ○ |
〔 まとめ 〕

今回は行政書士の必勝法で合格するためにるべき基本戦略のお話でした。
初めてこれを読んだ方は「こんなにもやらなければいけないのか?」とお思いかも分かりませんが、
これでもほぼ最短距離でのアプローチになります。
あえて期間の表示はしませんでしたが1年コースなら各期間3ヶ月、
10ヶ月コースなら各期間2.5ヶ月での組み立てが標準になります。
合格までの道筋をイメージしていただければ今回のミッションは成功です。
有能なナビゲーターになるには車のナビのようにできるだけ機械的に淡々と道を示すことが重要です。
勉強する方のあなたには申し訳ありませんが、非情で有能なナビゲーターを目指してください。
※近い将来的には、記憶の落ちかけたところを復習したり、理解度に応じて完全にカスタマイズされたスケジュール管理のできるAI知能付きのスーパーナビが出てくるのではないでしょうか。
ただし今現在でもかなりスケジュール管理のできるスマホ学習も存在していて、利用している人と利用していない人との合格率格差が生まれつつあるのも事実です、1年を棒に振るくらいなら手伝ってもらうものありかもしれません:行政書士試験:フォーサイト
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